長野新幹線E2系 N1編成

 もう数え切れないほど乗っている長野新幹線「あさま」。全部でN1〜13、N21の14編成ありますが、今までこの編成だけは乗ったことがなかった。
 N1編成です。
 E2系は試作車が2編成あり、1本は北陸新幹線用としてノーマルな編成、もう1本は東北新幹線用として先頭車に自動分割併合装置を備えた編成が造られました。前者が現在のN1編成です(ちなみに後者はN21編成になった)。経緯は知っていましたが、実際乗ってみたらこんなに違うとは思わなかった。乗ってすぐわかる異端車といえるでしょう。


 先頭車。実は前頭部の形も微妙に違うらしいですが、ちょっとそこまではわかりません。というか、乗るまでこれが普通と違う編成だとは気がつかなかった。


 車内に入ると雰囲気が違います。何しろ客室端部の壁が木目。E2系1000番代みたいですね。ちなみに普通のE2系「あさま」はクロス張りです。


 座席もE2系1000番代のように、肩の部分に握り手がついています。というか、シートそのものが1000番台と同じものなのかも。


 ほかの「あさま」E2系では一直線になっている窓枠の下の部分の張り出しも、座席の部分だけ凹んでいます。窓下もほかの編成ではクロス張りですが、この編成はFRPかなにかの成型品です。

 乗り慣れているつもりの路線でも、意外な発見があったりするもんですね。

切手で旅する世界の鉄道

 今年のゴールデンウィーク新型インフルエンザの流行にモロに被ってしまったので、海外乗り鉄に行きたかったけど断念した、なんていう人はけっこう多いんじゃないでしょうか。私もカレンダー通りではないにしても連休を取って、ウズベキスタンか中国−ベトナム陸路国境越えの旅をしたかったんですが、職場で「海外渡航禁止令」が…。
 その恨み?を晴らすというわけでもありませんが、外国、特にあまり日本で知られていない国の本や模型や写真なんかはないかなあ、とネットをさまよっていたら、とあるモノを発見しました。
 切手です。
 ウズベクの首都、タシケントの地下鉄について調べていたら、「郵趣サービス社」の「スタマガネット」という通販サイトの「タシケント地下鉄30周年記念切手」に行き当たったのです。サイト内を回ってみると、ほかにもウクライナだのシリアだの、なかなか本や写真でもお目にかかれないような鉄道の切手がいろいろあります。これはなかなか面白い。
 ということで、速攻で購入したのが以下にご紹介する切手たち。

  • トルコ


 「鉄」的には割と印象の薄い国ですが、旅好きの人なら「トルコは良かった」という旅行者に一度は会ったことがあるでしょう。テヘランイスタンブールを結ぶ国際列車「トランスアジアエクスプレス」なんて、ぜひ乗ってみたいです。
 この切手はトルコの代表的な駅と車両が絵柄で、上がイスタンブール・ハイダルパシャ駅(アジア側)、下が同じくイスタンブールのシルケジ駅(ヨーロッパ側)。シルケジ駅はかつて「オリエント・エクスプレス」の終着駅だったところですね。そういえば市内に「オリエントエクスプレス」というホテルがあるとか。
 車両はトルコ国鉄(TCDD)が誇る最新の高速列車、HT65000です。「軌間可変電車」として知られるスペインのS120(Alvia)とそっくりですが、それもそのはず、この車両はスペインのCAF製で、軌間可変機構がなく、編成両数がスペインの4連に対し6連になっていることなどを除けばほぼ同じ車両です。イスタンブールアンカラ間の高速新線用に発注され、最高速度は260km/h。同新線の一部区間が開業した今年の3月から営業運転に入っています。(参考=TCDD公式サイト
 ということは、ひょっとしてこの切手は高速列車運行開始記念なのかも。


 かつての共産圏の車両って、独特な造形でちょっと興味を惹かれるものがあります。そんなわけで、旧ソ連タイプの車両が描かれたウクライナディーゼル機関車シリーズ切手は見た瞬間に購入ボタン押下操作実行。写真ではなく絵ですが、かなりリアルで色もカラフル、車両の資料としても上出来です。
 左上は今でも旧東欧諸国をはじめキューバ北朝鮮でも使われている(らしい)M62。旧東ドイツではあまりのエンジンのうるささと特徴ある音に「タイガの太鼓」と呼ばれていたなんて話も目にします。この機関車はなんだか好きで一度実物を見てみたいと思ってるんですが、そんなにうるさいんでしょうかね?
 隣はTE109。DBのBR232と同じです。旧共産圏の技術が西側で活躍する好例? ウクライナでは丸っこいボディに載せ変えたリニューアル車も登場しているようです。
 左下は2車体連結の2TE10P、その隣はTEP10。上の2枚とは違い、背景には冬の凍てつく大地が描かれていて、いかにもウクライナ、という感じ。この2形式、恐らく関連のある形式なんでしょうが、前面こそ似ているとはいえ側面は大分違います。旧ソ連タイプの車両はいろいろ知りたいことがあるんですが、資料がだいたいロシア語ってのがネック。


 行きたかった…。
 中央アジア唯一の地下鉄、タシケント地下鉄の30周年(2007年)を記念した切手。駅の装飾がものすごく美しいそうで、この切手にもイスラム風の意匠を施した柱や壁のタイルが描かれています。車両はブラックフェイスで側面にリブの入った旧ソ連タイプの電車が写っています。
 行ったらぜひ各駅を見て回りたいんですが、ウズベク旅行記やガイドなんかを見ると「警官が難癖つけて金をせびろうとするので要注意」らしい…。写真撮影も禁止だそうです。となると、もし行ったとしても、記録はこの切手くらいか?


 シリアの首都・ダマスカスからヨルダンを経てイスラム教第2の聖地、サウジアラビアメディナまでを結んでいた路線の開業100周年記念切手(2008年)です。
 建設されたのはオスマン帝国時代で、しかも実際に全路線が運行されていたのは第一次大戦中まで。サウジ国内の区間はかの「アラビアのロレンス」が破壊して以降運転されておらず、ロレンスが襲撃した列車の残骸がそのまま残っているというからなんだかちょっとロマンがありますね。一応ヨルダン、シリア国内には残っていることになっていて、トーマスクックのoverseas timetableを見ると一応時刻が出ていますが、「service temporalily suspended」だそうです。ちなみにヨルダン国内にはリン鉱石運搬を行う現役の支線(アカバ鉄道)もあって、これは以前NHKのドキュメンタリー番組でも取り上げられていました。
 切手に描かれているのは蒸機。タンク機が4両の客車を牽いてなかなか雄大なアンダートラス鉄橋を渡る構図です。シリア、ヨルダン国内の路線はヘンシェル製だかの現役蒸機が残っていてチャーターにも応じるとかで、一時期世界の蒸機ヲタに注目されていたようですが、今はどうなんでしょう。


 TAZARA30周年の記念切手。「TAZARA」ってなんだ?という感じですが、日本の中学校で地理を習った人は大体知っているはず。「タンザン鉄道」のことです。
 この鉄道が中国の援助で造られたというのは、それこそ地理の教科書にも載っていたので有名でしょうが、この切手も中国製で、一番上には中国国旗が描かれ、「坦賛鉄路30周年」やら「河南省郵電印刷廠」の文字が入っています。
 鉄道自体は有名ながらどんな車両が走っているかはよくわからないので切手に期待していたのですが、車両はあまり写ってませんね。世界中を旅しているバックパッカーの人のサイトなんかで見てみると、白をベースに窓周り青、その下に細い赤ラインの客車が写っているのがあったので、廃止された雲南省のナローの客車なんかが中古で入ってきてるんじゃないか、と思うんですが…。機関車はGEのU30Cが使われているようです。中段の左側に描かれている建物はタンザニアダルエスサラーム駅、右側がザンビア側のニューカピリムポシ駅(首都ルサカからはだいぶ離れているのが不思議)。どちらもかなり立派な駅舎です。
 wikipedia(英語版)によるとTAZARAは金融危機の影響で運営がかなり厳しくなっているようです。前は一応公式サイトもあったのに今は「Under Construction」になってるし、大丈夫でしょうか?


 鉄道と郵便というのは何気に深いかかわりがあります。日本でも郵便番号はかつての鉄道輸送ルートを基に付けたなんて聞いた事がありますし、外国だとフランスには郵便輸送専用のTGV「La Poste」があるのは有名ですね。イギリス英語圏優等列車を「Mail Train」と呼ぶのは(インドなんか○○mailって列車がたくさんありますね)郵便輸送用の最速の列車だったことから来ていたりと、まあ例を挙げればキリがありません。
 「鉄」も凝り性の人が多いから、切手コレクターもけっこういるんじゃないでしょうか?私はイタリアの列車と同等の大ざっぱな性格なので「コレクション」ってのをちゃんとできない人なんですが、こういう知られざる国の鉄道切手はちょっと集めてみたいかも、と思った次第。

世界最長国際列車で北朝鮮に潜入!

 すごいレポートを見つけてしまった。

 タイトルは「The forbidden railway - a train trip to Pyongyang」
 2008年9月、オーストリアから鉄道でユーラシア大陸を横断し、通常は外国人が通れないとされるロシア/北朝鮮国境を列車で越え、これまた通常なら強制的にガイド付きとなるはずの北朝鮮国内を丸1日以上「自由旅行」したという、かなりアドベンチャー旅行記です。


 著者はオーストリア人の鉄ちゃんで、職業も鉄道関係(OBB職員)のHelmutさん(28歳)。ユーラシア大陸の鉄道が好きで、東欧や旧ソ連諸国を旅するうちに北朝鮮の鉄道に興味を持ったとか。中でも通常は外国人が通れないとされるハサン(ロシア)−豆満江北朝鮮)間の「豆満江ルート」での国境越えに惹かれ、06年には「実験」として、ロシア国内を走る北朝鮮行き国際列車に乗ってシベリア旅行をしたそうです。
 そして08年、友人のスイス人鉄(この人はSBB職員)と2人でついに「念願」を実行。乗れないはずの列車、通れないはずの国境を通って北に行ったぞ!というのがこの記録です。英文ですが、難しい表現がないのでかなり読みやすく、全旅程(けっこう長い)を一気に読んでしまいました。


 彼らが乗ったのは、モスクワ発平壌行きの直通寝台車。北朝鮮国鉄の車両で、モスクワ−ウスリースク間はロシア鉄道(RZD)の「ロシア号」ウラジオストック行き、ウスリースク−ハサン間はローカル列車に併結され、国境区間は単独で越えた後、北朝鮮国内は同国鉄の7列車平壌行きに併結、という行程。走行距離は1万キロを越える世界最長距離の列車で、時刻表通り走ったとしても片道10日間の長旅です。

 2人はモスクワから全区間乗ったわけではなく、ロシア国内のイルクーツクからこの客車に乗車。最初は乗車拒否されそうになったり、車掌に珍しがられたりしながら、本当に入れるのかどうかわからない北朝鮮へと向かいます。実際には緊張の連続だったのかもしれませんが、意外にあっさり入国できたようで、しかも写真も撮りまくりです(何しろ監視員=ガイドがいない)。
 通常、外国人旅行者が列車で北朝鮮に行く場合に通るのは、中朝国境を越えて新義州から平壌へ至る「平義線」で、この沿線は外国人が通ることを警戒して見せ掛けだけのきれいなインチキ住宅とかを並べてあるらしいですが、彼らが通った路線は当然ながら「外国人の目」を考えていない普通の路線です。中国やロシアと似ているようでいて異なる客車や機関車、元平壌地下鉄の電車を無理やり改造したと思われる通勤電車といった珍しい車両の写真もさることながら、「外国人向け見世物」ではない「人民の生活」にも興味深いものがあります。車窓に見える人々は「貧しいが栄養失調には見えない」そうですが、夜は住宅も駅も真っ暗だとか。旅客列車は彼らの乗った列車も含め一応ちゃんと走っているようですが、貨物列車は少なく編成も短いそうで、普通の人々が暮らすためのエネルギーや物資はやっぱり足りていないのだろうなあ、と想像できます。


 ジャーナリストでもなかなかやらないであろうこの「冒険」旅行、当然の如く気になるのは「どうやってチケット取れたの?」ということですが、この人はモスクワのチケットオフィスに友人がいるそうで、そのせいかどうかは分かりませんが特に問題なく買えています。「よく国境で追い返されなかったもんだ」とも思いますが、この国境(豆満江)は1994年以降外国人には開放されていないものの、ビザには依然出入国地点として記載されているため、入国自体が「完全に違法」というわけではないそうです。
 ただし、危ない橋を渡っていることは確実で、実際に旅行後に「この旅行は北朝鮮の旅行社の中で深刻な問題を引き起こした」という旨のメールが旅行会社から来たようです。加えて「同じことをやって成功する保障はありません」「おすすめしません」と何度も書かれています。


 しかし、モスクワ−平壌間の直通客車、ちゃんと運行されているんですね。私がこの「世界最長距離国際列車」のことを知ったのは、2007年に出版された「将軍様の鉄道 北朝鮮鉄道事情」という本だったんですが、この中で

 このほか7/8列車が時刻表上で紹介されているが、北朝鮮内の平羅線の整備状況が劣悪で定時運行ができないため、2004年時点では恐らくモスクワからの列車はロシア側国境の町のハサンで打ち切られ、北朝鮮国内へは別の列車が接続していると思われる。

 という記述があって、そうか1万キロオーバーの国際列車はもう走ってないのか、と思っていたんですが、まさか実際に乗った人(北朝鮮人以外)がいるなんて。本当に驚きです。


 すごい!と思うか危険を顧みないバカと思うかは人それぞれでしょうが(今の日本では後者のほうが多いだろうなあ)、貴重な旅行記なのは間違いないので興味のある方はマジで一読をお勧めします。

アメリカ高速鉄道網構想 オバマ大統領が発表

 アメリカのオバマ大統領は16日、米国内の高速鉄道網整備に今後5年間で計130億ドル(約1兆3000億円)を投資する考えを発表。(参考=米運輸省の発表米運輸省鉄道局の資料Railway Gazette International


 さすがオバマだ!
 すでにある程度話題になっていますが、アメリカ中に高速鉄道網を張り巡らそうというかなり野心的なプロジェクト。新たな高速交通の整備によって石油消費の削減、地球温暖化防止のほか、渋滞・空港の混雑抑制をも狙ったもので、今年2月に可決された総額7870億ドル(約73兆円)の景気対策法案に含まれる初期費用80億ドルのほか、今後5年間に毎年10億ドルを投資するということです。

 計画されているのは以下の10地区。「10 corridors(回廊)」という言い方をしていますが、「10路線」ではありません。

 まあ書いてる本人もどこだかいまいち分かってない地名をダラダラ連ねるより地図見てもらったほうが早いですね(米運輸省発表の高速鉄道計画図(pdf))。
 路線延長はそれぞれ100〜600マイル(160〜960km)程度。米運輸省は100マイル以下は近郊鉄道と車、600マイル以上は飛行機が適しており、高速鉄道の威力がもっとも発揮できるのはこの範囲と考えているようです。これはヨーロッパの専門家も似たようなことを言ってますね*1。確かに、所要時間で考えれば飛行機に対して競争力があるのはこの程度の距離でしょう(そう考えると、日本の都市間距離というのはやっぱり鉄道向き)。
 
 高速鉄道というと、最高速度はどのくらいになるのか?というのがどうしても気になるところです。資料にある米運輸省高速鉄道の定義では、最高速度240km/h程度で300-960kmの距離を結ぶのが「HSR(High-Speed Rail)Express」、最高速度180-240km/h程度で160-800kmの距離を結ぶのが「HSR Regional」となっていて、どちらも最高速度は意外と控えめな感じです。既存のAmtrakの「Acela Express」と同じですね。ちなみに、どのルートが「HSR Express」なのか「Regional」なのかについては特に出ていません。ただ、カリフォルニア州については今回の計画より前から最高速度300km/hオーバーの高速鉄道計画があるので、そのプランが推進されることが予想されます。
 路線整備にあたっては、既存の路線改良と新線建設の2タイプが考えられているようです。資料にはどこにも書いてないようなので、どの路線をどのように整備するかは今後の調査次第ということでしょう。

 この計画は環境・エネルギー対策はもちろんですが、かなりの経済効果を生むことも確実。プロジェクト自体での雇用や建設、車両・電機関連は当然ですが、鉄道の特性といえる都心部への直接乗り入れによって中心市街地の再開発も行われるでしょうし、それが治安の改善にもつながるかもしれません。
 日本の鉄道関連メーカーにとっても大きな商機でしょう。NY地下鉄の車両は「Kawasaki」がトップシェアなのは有名ですが、ヨーロッパ、アジア向けでは正直なところ劣勢ながらも、アメリカ向け車両輸出では各地のLRT、近郊鉄道車両なんかを中心に海外巨大メーカー各社と張り合って善戦しているようですから、もしかしたら10年後にはアメリカに「Shinkansen」が走っているかも?


 なんでもアメリカの石油消費の70%、温室効果ガス排出の28%は交通分野だそうです。オバマ大統領は前政権と違って温暖化防止に積極的な姿勢を見せていますが、この高速鉄道網計画もその中の「切り札」の1つでしょう。余計なしがらみがないというのは本当にアドバンテージです。まさに「Change」、変われば変わるもんなんですね。

 しかし、考えようによっては「世界の超大国アメリカにいままで「Acela」以外の高速鉄道がなかった、というのがおかしいという気もしなくはありません。中国だって物凄い勢いで高速新線整備を進めているこのご時勢、高速鉄道網くらい持ってないと「超大国」は名乗れないぞ!かなり大規模なプロジェクトではありますが、「鉄」としてはもちろん、環境問題の観点からも着実に実行されるのを願いたいところです。Yes,you can!

*1:「HIGHSPEED IN EUROPE」という本の前書きに「high-speed railways are now an extremely attractive alternative to air transport over distances of up to 1200km」とあった

リニモに乗る。


 何をいまさら、って感じではありますが、日本初の実用リニアモーターカーリニモ」に初めて乗ってきました。前から乗ってはみたかったんですが、名古屋の中心部ならともかく藤が丘とか八草なんてまず行く機会ないし、わざわざこれだけ乗りに行くのもなあ…と思っていたら開業後4年経ってしまったというこの体たらく。今回ちょうど名古屋方面に用事があったので、やっと乗ることができました。


 「リニモ」は名古屋市営地下鉄東山線の終点・藤が丘から、愛知環状鉄道の八草までを結ぶ全長8.9km、全9駅のリニアモーターカーで、正式な路線名は愛知高速交通東部丘陵線。2005年に開かれた万博「愛・地球博」の会場アクセスとして同年3月に開業しています。システムはJAL名鉄*1が開発した、磁石の吸引力で浮上させる「HSST」で、3両編成の電車が最高速度100km/h、完全自動運転で走ります。公式サイトはこちら

  • 乗ってみた感想

 正直言ってそんなに揺れないというわけでもない。確かに低速走行中は全く揺れないのでちょっと感動的ですが、少しスピードが上がってくるとゴムタイヤ式新交通システムのような振動が出ます。高速走行中の乗り心地なら東海道線313系特別快速のほうがいいかもしれません。そういえば、上海のリニアもけっこう揺れました(上海リニア乗車記はこちら)。
 ただ、特筆すべきはカーブ通過のスムーズさ。特に急カーブを通り抜けるときのフィーリングは今までの陸上交通機関にはない未知の乗り心地でした(というと大げさかもしれないが)。例えて言うなら、波の全くない静かな水面を旋回するボート。とにかく、一般の鉄道や車のような「物理的接触によって曲がってる感」がありません。

  • 車両デザイン

 「新交通システム」はやっぱりいかにも近未来っぽいデザインであってほしいと個人的には思うのですが、その点リニモはかなりいい線いってます。

 床から天井まで完全ガラス張りの前面。「透明感」って、未来っぽさを感じさせるキーワードの一つな気がしますが、先頭に乗っているとまさに透き通る感じ。全面ガラス張りにするのでも、単に3枚縦長のガラスを並べただけだったらビルの入口の自動ドアみたいですが、4枚を組み合わせて表情を付けているところがクールです。ベルリンUバーンのシリーズHにちょっと似ている気がしなくもない。



 室内からの展望。観覧車を真ん中に入れて撮ってみる。



 これはラッピング広告車。確か中部電力の広告でしたが、最近のラッピングバスみたいな「いかにも広告」という感じではなく、カラーリングの一種として見られるようなデザインなので好感が持てます。



 車内インテリアは照明が特徴的。普通の電車だったら広告スペースになるであろう窓上の部分に、カバー付きの照明が車内全長にわたって並んでいます。海外の車両だとたまにありますが、これは雰囲気いいですね。広告収入は減るでしょうが、なかなか思い切ったデザインです。全体の色使いは割とシンプルなモノトーン系。



 路線図。各駅ごとにテーマカラーとシンボルマークがあります。新交通システムの常として、駅がどれも似たような造りなので、色分けは必須かも。サインシステムについていえば、路線図や駅の表示類に正式な社名や路線名がまず出てこないのも特徴的ですね。各駅の入り口も Linimo だけだし。クールです。

 「陶磁資料館南」駅の近くに車両基地があるので、外からでも様子が見えないかと行ってみました。

 駅を出て、リニモの高架と併走する道路を藤が丘方向に徒歩約5分、フェンス越しですが森に囲まれた車両基地が見えてきます。本社もここに併設。写真はフェンスの網目の間から十分撮れます。この時は01編成が昼寝中でした。
 車両基地・本社は距離的には「陶磁資料館南」が最寄り駅ですが、車庫の出入庫線は隣の「愛・地球博記念公園駅」につながっています。ちなみに、この出入庫線でなくてもいいんですが、リニモのポイント転換は桁ごと「くにゃっ」と曲がるので必見。跨座式モノレールのような直線的な動きではなく、本当に「くにゃっ」と線路が曲がります。八草駅では到着した電車は引き上げ線に入って転線するので、必ず見られます(動画撮ってくればよかった)。
 しかしこの駅、周りに人家は見当たらず、駅名になっている資料館もやや離れていて、あるのは森と道路だけ。利用者は私のような物好きとリニモの社員とモリゾーとキッコロくらいか。


 HSSTって、私が子どもの頃の「つくば万博」や「横浜博」で走っていて、乗るのにものすごく並んだ記憶がありますが、今や夢の乗り物も日常の交通機関として定着しているんですね。
 「未来」っていきなり現れるんじゃなくてじわじわと浸透してくるものだからなかなか実感がわきませんが、私が博覧会で長時間並んでHSSTに乗った頃から見れば、この「リニモ」も含めて今の世の中って実はけっこう遠くまで来てるんだろうな…と、「未来の交通機関」に乗りながらふと考えてしまいました。かつては夢だった現実にはなかなか気づかないということか。

*1:名鉄ってANA筆頭株主ですよね。今はJALは開発から撤退していますが、ひょっとして関係あるんだろうか?

イタリア中部で地震、鉄道は

 6日未明、イタリア中部アブルッツォ州ラクイラ(L'aquila)でマグニチュード6.3の地震が発生。死者は100人以上、5万人以上が家屋を失った可能性。(参考=毎日新聞

 読めないクセにイタリアの鉄道サイトを毎日のようにチェックしていたり、手持ちの模型車両もイタリアの車両がやたら多かったりと、イタリアには親近感を持っているというか要するに好きなので、非常にショッキングなニュースです。実は今ウチの線路上に停まっているのもTrenitaliaのAln668 3300番代というアブルッツォ州を走るディーゼルカーだったりするので*1、なおさら他人事とは思えない。
 ラクイラアブルッツォ州の州都で、人口約7万人。この街を通っている鉄道は、ローマ−アンコナ間の幹線の中間駅、テルニ(Terni)と、ローマ−ペスカラ(Pescara)間幹線の中間駅、スルモナ(Sulmona)を結ぶ単線の非電化路線です。トーマスクックのレイルマップを見ると、周囲を2000m級の山々に囲まれているからか「景勝ルート」のマークがついています。
 これだけの大災害なので鉄道を含む交通網にも被害が及んでいるようですが、イタリアの鉄道サイトFerrovie.it onlineによると、地震発生後は同州内を走る路線の多くが一時運転を見合わせたものの、同日夕方までにスルモナ−ラクイラ間を除いて運転を再開。また、被災者の住居代わりとして寝台車8両、食堂車1両や、各地から集めたクシェット(簡易寝台車)が現地に送り込まれるようです。確かに、客車は雨風をしのげるのはもちろん、そう簡単には壊れないし、停電でもディーゼル機関車をつなげば電源も供給できるということを考えると、線路さえ繋がっていれば災害支援にかなり有効でしょう。昔イタリア国鉄には病院車もあったはずですが、今はどうなんだろう。それにしても運転再開の早さといい、鉄道当局はかなりがんばっている感じですね。
 私の住む地域でも2年前に比較的大きな地震がありましたが、日本は地震国だけにやっぱり人事とは思えません。すでにかなりの被害が出ていますが、今からでもできるだけ多くの人が救出されることを祈っています。
(4/7追記)Sulmona-L'aquila間は2日以内に運行再開の見込みとのことです。
(4/14追記)4/9に1日4往復で運転再開。臨時ダイヤはこちら(pdf)。
(5/13追記)Sulmona-L'aquila間の新ダイヤ発表。こちらです(pdf)。

*1:Aln668 3300番台…Aln668形の最終増備車で、40両全車がアブルッツォ州のスルモナ機関区に所属

ドバイのモノレール、開業は今年後半に?

 今年4月の予定だったドバイのパーム・ジュメイラ(Palm Jumeirah)モノレールの開業が、今年後半にずれ込むようです。(参考=ArabianBusiness.com

 この路線、ドバイ初なのはもちろんのこと、中近東初のモノレール路線です。ドバイといえばすさまじい勢いで経済成長を続け、金融と観光とオイルマネー*1で繁栄を謳歌する砂漠の摩天楼都市のイメージが思い浮かびますが、世界的な金融危機でかなりダメージを受けているようですね。上記の記事には特にはっきりした理由が書かれていませんが、モノレールの開業遅れも景気低迷が影響しているのでしょうか。施設は完成し、試運転も行われているはずですが…。


 パーム・ジュメイラ・モノレールはドバイの政府系不動産デベロッパ「ナキール(Nakheel)」の所有で、同社が開発を手がける人工島「パーム・ジュメイラ」とドバイ本土を結ぶ全長5.4km、全4駅の跨座式モノレール路線。開業すれば、完全自動運転(添乗員あり)の3両編成の電車が3〜20分間隔で運転される予定になっています。不動産デベロッパーの所有する新交通システムという点で、ちょっと「山万ユーカリが丘線」を思い起こさせます。実際の運行業務はシンガポールの地下鉄会社SMRTの子会社、SMRTエンジニアリングに委託されるそうです。

 このモノレール、車両が日立製なのは以前書いたとおりですが、車両を含めシステム全体が日本企業の手によるもの。プロジェクト全体を受注したのは丸紅で、日立のほかにも信号システムは日本信号、運賃収受システムはオムロンなど、日本の鉄道関連設備でおなじみの企業が多数参加しています。同様のシステムを持つ大阪モノレールも業務支援提携を結んでいて、スタッフ研修は大阪モノレールで行ったそうです。ちなみに、大阪府とドバイは姉妹都市なんだとか。
(参考=丸紅プレスリリースRailway Gazette International大阪モノレール広報誌(pdf)


 実はこのブログの検索キーワードで今一番多いのが「ドバイモノレール」なんです。そんなわけでドバイモノレールのことをちょっと調べていたらこんなニュースが出てきたわけですが、しかし一体なんなんですかパーム・ジュメイラって。凄すぎる。高級すぎて私には縁がなさそうな国ですが、メトロやモノレール試乗を兼ねて一度くらい行ってみたいもんです。まあ、せいぜいトランジットで立ち寄るくらいが関の山でしょうが…。

 ドバイモノレール車両引渡し式の際の記事はこちら

*1:実は石油産出量は大したことないので、あくまでイメージですが