リニモに乗る。


 何をいまさら、って感じではありますが、日本初の実用リニアモーターカーリニモ」に初めて乗ってきました。前から乗ってはみたかったんですが、名古屋の中心部ならともかく藤が丘とか八草なんてまず行く機会ないし、わざわざこれだけ乗りに行くのもなあ…と思っていたら開業後4年経ってしまったというこの体たらく。今回ちょうど名古屋方面に用事があったので、やっと乗ることができました。


 「リニモ」は名古屋市営地下鉄東山線の終点・藤が丘から、愛知環状鉄道の八草までを結ぶ全長8.9km、全9駅のリニアモーターカーで、正式な路線名は愛知高速交通東部丘陵線。2005年に開かれた万博「愛・地球博」の会場アクセスとして同年3月に開業しています。システムはJAL名鉄*1が開発した、磁石の吸引力で浮上させる「HSST」で、3両編成の電車が最高速度100km/h、完全自動運転で走ります。公式サイトはこちら

  • 乗ってみた感想

 正直言ってそんなに揺れないというわけでもない。確かに低速走行中は全く揺れないのでちょっと感動的ですが、少しスピードが上がってくるとゴムタイヤ式新交通システムのような振動が出ます。高速走行中の乗り心地なら東海道線313系特別快速のほうがいいかもしれません。そういえば、上海のリニアもけっこう揺れました(上海リニア乗車記はこちら)。
 ただ、特筆すべきはカーブ通過のスムーズさ。特に急カーブを通り抜けるときのフィーリングは今までの陸上交通機関にはない未知の乗り心地でした(というと大げさかもしれないが)。例えて言うなら、波の全くない静かな水面を旋回するボート。とにかく、一般の鉄道や車のような「物理的接触によって曲がってる感」がありません。

  • 車両デザイン

 「新交通システム」はやっぱりいかにも近未来っぽいデザインであってほしいと個人的には思うのですが、その点リニモはかなりいい線いってます。

 床から天井まで完全ガラス張りの前面。「透明感」って、未来っぽさを感じさせるキーワードの一つな気がしますが、先頭に乗っているとまさに透き通る感じ。全面ガラス張りにするのでも、単に3枚縦長のガラスを並べただけだったらビルの入口の自動ドアみたいですが、4枚を組み合わせて表情を付けているところがクールです。ベルリンUバーンのシリーズHにちょっと似ている気がしなくもない。



 室内からの展望。観覧車を真ん中に入れて撮ってみる。



 これはラッピング広告車。確か中部電力の広告でしたが、最近のラッピングバスみたいな「いかにも広告」という感じではなく、カラーリングの一種として見られるようなデザインなので好感が持てます。



 車内インテリアは照明が特徴的。普通の電車だったら広告スペースになるであろう窓上の部分に、カバー付きの照明が車内全長にわたって並んでいます。海外の車両だとたまにありますが、これは雰囲気いいですね。広告収入は減るでしょうが、なかなか思い切ったデザインです。全体の色使いは割とシンプルなモノトーン系。



 路線図。各駅ごとにテーマカラーとシンボルマークがあります。新交通システムの常として、駅がどれも似たような造りなので、色分けは必須かも。サインシステムについていえば、路線図や駅の表示類に正式な社名や路線名がまず出てこないのも特徴的ですね。各駅の入り口も Linimo だけだし。クールです。

 「陶磁資料館南」駅の近くに車両基地があるので、外からでも様子が見えないかと行ってみました。

 駅を出て、リニモの高架と併走する道路を藤が丘方向に徒歩約5分、フェンス越しですが森に囲まれた車両基地が見えてきます。本社もここに併設。写真はフェンスの網目の間から十分撮れます。この時は01編成が昼寝中でした。
 車両基地・本社は距離的には「陶磁資料館南」が最寄り駅ですが、車庫の出入庫線は隣の「愛・地球博記念公園駅」につながっています。ちなみに、この出入庫線でなくてもいいんですが、リニモのポイント転換は桁ごと「くにゃっ」と曲がるので必見。跨座式モノレールのような直線的な動きではなく、本当に「くにゃっ」と線路が曲がります。八草駅では到着した電車は引き上げ線に入って転線するので、必ず見られます(動画撮ってくればよかった)。
 しかしこの駅、周りに人家は見当たらず、駅名になっている資料館もやや離れていて、あるのは森と道路だけ。利用者は私のような物好きとリニモの社員とモリゾーとキッコロくらいか。


 HSSTって、私が子どもの頃の「つくば万博」や「横浜博」で走っていて、乗るのにものすごく並んだ記憶がありますが、今や夢の乗り物も日常の交通機関として定着しているんですね。
 「未来」っていきなり現れるんじゃなくてじわじわと浸透してくるものだからなかなか実感がわきませんが、私が博覧会で長時間並んでHSSTに乗った頃から見れば、この「リニモ」も含めて今の世の中って実はけっこう遠くまで来てるんだろうな…と、「未来の交通機関」に乗りながらふと考えてしまいました。かつては夢だった現実にはなかなか気づかないということか。

*1:名鉄ってANA筆頭株主ですよね。今はJALは開発から撤退していますが、ひょっとして関係あるんだろうか?