アジア共通ICカード、来年から関西・福岡で実証実験

 アジア各国で共通利用できるICカード乗車券の実現に向け、日本を含む4カ国・地域の5事業者が連携し、来年から関西と福岡県で実証実験を行うことが判明。
 (参考=西日本新聞

 去年12月の計画発表時にも書いた話ですが、本当に実現に向かいつつあるようです。実証実験に参加する5事業者はスルッとKANSAI西鉄、オクトパス(香港)、韓国スマートカード(ソウル)、EZ-Link(シンガポール)。ちなみに韓国スマートカード(カードの名前はT-money)以外のシステムはFeliCaです。実証実験が関西と福岡なのは、韓国―日本を行き来する人が多いという点を考えてだろう。
 当然ながら一番気になるのは決済システムだが、結局ポストペイ方式になる模様。要するに使った分をクレジットカードから引き落とす仕組みです。まあどう考えてもこれが一番簡単に実現できる方法だろう。この方式なら各国の乗車券システムには特に手を加えることなく「外国でクレジットカードで買い物をした」のと同じように使えるわけだ。決済そのものはクレジットカードで行うわけだから、一部で懸念されていた「外国からの乗車券システムへのサイバーテロ」の心配もないだろう。
 複数の異なる国・システムでも使えるようにする方法としては、通信方式・OSが同じ場合(例えばFeliCaを使ってる香港とSuica、とか)は、内部のメモリーに各都市ごとのデータを分割して入れておく、とか、通信方式・OSが異なる場合は各システムごとの違いを自動判別してエミュレーションするとか、いろいろ考えられているようです。
 (参考=国交省の資料(pdf)。わかりやすい。
 というわけで、システム的には問題なくできそうな感じです。

 確かにこれが実現すれば便利だとは思う。例えばSuica―オクトパスで相互利用できれば、町田から小田急に乗って、新宿でJRに乗り換えて「エアポート成田」のグリーン車で空港に行って、香港に着いたら空港から機場快線で街に出て、スターフェリー乗ってバス乗って地下鉄乗ってコンビニで買い物・・・あたりまで全部キャッシュレスでできる。
 でも、このカードはポストペイ方式なので、持てるのはクレジットカード保有者に限定される。だったら、クレジットカードの発行会社がそれぞれ勝手に各国のIC乗車券機能をカードに付加すれば、それでいいんじゃないだろうか。クレジットカードに搭載した非接触IC決済サービスは、すでにマスターカードが各国で使えるのを(PayPass)やっている。要は民間がやればいい話で、それを国が一大事業としてやるほどの必要性があるのかというと・・・ちょっと疑問が残る。国が主導でやるべきは、まずは国内のICカード乗車券の完全共通利用化じゃないだろうか?

 この話は確かアジア各国の観光・交流促進というところから出てきたはずだが、それが航空とか直接的に各国間の往来に関連する部分ではなく「ICカード乗車券の共通利用」というところに行き着くのも、よく考えてみれば不思議な気もする。たばこ自販機の「taspo」やら、前政権の「再チャレンジ支援」で出てきた職歴のICカード発行やら、どうも国はICカードをやたらめったら作りたくて仕方ないように見える。政治家か役人にICカード利権がらみの人がいるのでは?とか邪推したくなってしまうんだが・・・