ICカード的大東亜共栄圏構想?

 国土交通省は18日、アジア各国で共通に使えるICカード乗車券の実用化に向け、来年度から実証実験を行うと発表。
 参考=12/18付読売新聞
 本気でやるつもりだったんですねえ。ちょっと驚いた。
 俺は今年、日本以外では台北、上海、香港の3都市でICカード乗車券を使った。ICカード乗車券ははっきりいって便利だ。特に外国だと、慣れないコインで切符を買ったりバスの運賃箱に支払うより圧倒的に楽だ。同じことは日本に来た外国人も感じていると思う。特に、日本の都市交通機関の最大の弱点である(と俺は思っている)事業者ごとにバラバラの複雑な運賃制度やらそれに伴う乗り継ぎ制度やらといった面倒な部分を、ICカードならチャージさえしておけばピッとかざすだけでスルーできるんだから、そのメリットはかなり大きい。
 で、これは要するに「交通機関にしか使えない国際デビットカード」をつくるようなもんだ。日本でチャージしておけば香港でも中国でも使えますよ、と。でも、ヨーロッパのように共通通貨があるならともかく、アジアはみんな国ごとに通貨が違うし為替レートも変動する。そのへんの換算はどうするんだろうか?かなり複雑なシステムが必要になるだろうし、はっきりいって「電車に乗れる+α」くらいの低額のカードに、それに見合うメリットがあるとは思えない。単にクレジットカードやデビットカード、あるいは各国の通貨でIC乗車券にチャージできる機械を共通・各国語表記で設置すれば、それでいいんじゃないか?
 国内のクレジットカードに各国のIC乗車券の機能を付ける取り組みも進めるんだそうだが、やるならそっちだけで十分だと思う。これなら普通に「外国で買い物をした」のと同じようにカードから引き落とされるだけで済むんだから、各国別の乗車券システムのままでできるだろう。たぶん。

 あるいは、国交省はこれでアジアのICカード業界で日本の影響力を高めようとか思ってるのかもしれないが、はっきりいってそれは無理だと思う。ICカード乗車券に関しては日本以外の国のほうが全然先行している。そりゃ香港のオクトパスだって技術はソニーFelicaかもしれないが、結局日本よりも早く採用したわけで、自販機でもコンビニでもバスでもフェリーでも使える普及率と、それに伴う運用ノウハウでは恐らく全然かなわないだろう。上海ですらバス・地下鉄・タクシーで共通利用できるんだぜ?東京はやっとJR・私鉄相互利用ができるようになったとはいえ、未だにバスは使えないのばっかりだ。技術は超一流でも、それを実際に使えるようにする、という面では、正直言って日本はどんどん取り残されていっている気がする。
 まずは国内のICカード乗車券を完全に統一利用できるようにする、というのが物事の順序じゃないでしょうか。


ICカード乗車券各種。左→右の順で上からSuicaPASMOtoicaICOCA、オクトパス(香港)、passca富山ライトレール)、Easy card(台北)、上海公共交通カード(上海)>