DVD「TGV 世界最高速はこうして生まれた」

 フランスのTGVが鉄車輪式の鉄道として世界最高速度となる574.8km/hを記録したのは、今から約2年前の2007年4月3日。当日はフランスのみならず日本のテレビでも大きなニュースとして扱われ、今でもYouTubeなんかで記録達成時のニュース映像を見ることができます。
 しかし、当時本当に仕事休んでフランスに見に行こうか?と思っていた私としてはそれだけでは物足りない。なんか速度記録達成のドキュメンタリーとかないの?と思っていたら、ありました。

TGV ~世界最高速はこうして生まれた~ [DVD]

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 このDVD、発売元がNHKエンタープライズということから分かるとおり、元はNHK BS-2で07年11月に放送された「TGV 世界最高速はこうして生まれた」という番組です。実際の番組制作はフランスのテレビ局。本編(48分)と特典映像2本(計27分)の構成で、本編は日本語吹き替え、特典映像は字幕となっています。
 本編は1955年の331km/h達成など、過去のSNCFのスピード記録挑戦の歴史に始まり、長い直線区間を持つTGV東ヨーロッパ線の完成で、90年の515.3km/h達成以来となるスピード記録への動きが生まれたことや、試験編成「V150」の開発、そして最高速度実現のために繰り返された走行試験についてのドキュメント。ちなみに特典映像は574.8km/h達成地点出身のテストエンジニアが里帰りして地元の人々に祝福される話と、568km/h達成時の試験での、発車から停止までの運転席の様子を収録しています。

 本編のメインはもちろん走行試験の場面で、老けたルー大柴みたいなオーバーアクションのフランス人鉄道ジャーナリストがナビゲーター。パンタや台車の動きを監視するモニターがずらりと並んだ試験車内の様子をはじめ、運転席や運転司令室、そして試験を支える整備の様子などを紹介するほか、試験のためにカーブのカントを補正したことや、架線電圧をアップ(31000V)したことなど、やや専門的な部分もしっかり解説します。なんと500km/h以上で走行中、台車の一部が破損して窓ガラスが割れ急停車、なんて場面もあり。緊急停車時のブレーキディスクが発熱で真っ赤になっているのはなかなか凄い映像です。
 568km/hを達成した3月29日の試験は、朝の車庫出発から終了までを追跡。走行中の運転席や試験車内の映像からは張り詰めた空気が、そして終了後のインタビューでは、関係者の喜びと満足感が伝わってきます。


 しかし、実はこのDVDのクライマックスはこの568km/h達成の場面です。これからいよいよ574.8km/hへ挑戦!と思いきや、4月3日の本番は「走行試験のテレビ中継を特設会場で見る観客」の映像だけ。試験終了後の運転士や関係者へのインタビューはありますが、574.8km/h達成時の車内や走行シーンはありません。


 恐らくこの番組、フランスでは574.8km/h達成当日か翌日あたりに放送されたものなんでしょう。そう考えれば、記録達成までの舞台裏…として、当日の様子がないのも理解できます。でも、DVD化にあたっては、せめて少しでもいいから本番の試験の様子を入れて欲しかったところです。

 とはいえ、記録として持っていて絶対に損はない1枚でしょう。


 574.8km/h達成当日の記事はこちら。