東武50050に乗る

 登場後すでに1年半、見かけたことは何度もあったものの実は初めて乗った。乗車区間東急田園都市線長津田―南町田間。
 これは素晴らしい電車だ。最近の関東私鉄の新車の中では、少なくともデザイン面に関しては内外装ともに最高レベル。

 内装は白系のパネルで、艶を抑えてあることもあって関西私鉄っぽいというか、安っぽさのない明るい印象。シートは最近の新車にしては背ずりの高さがけっこうあり、座り心地はなかなか良好。東武は通勤車でもけっこうシートに気を配っている印象がある*1
 ユニークなのはドア脇の手すりが一般的に見られる棒ではなく、凹形のアルミ製の部品になっていること。ドア周辺がかなりすっきり見えて、実用性はどうかわからないが個人的にはこれはなかなか気に入った。ただ、ドアの開閉音はちょっと気になった。ドアの駆動装置の音ではなく、ドアレールをこする音がガリガリと響く。駆動装置そのものはかなり静かなのでちょっともったいない。
 乗り心地はちょっと独特。線路の継ぎ目の振動はほとんど感じなかったが、ロードノイズというか、車輪がレールの上を転がる振動そのものが床にビリビリ響く感じがした。乗り心地は良いし特に気にはならないが、線路の継ぎ目の振動以外はほとんど感じない小田急3000とは対象的という印象を受けた。車体が柔らかめなんだろうか?ちなみに乗ったのは先頭車なので、電動車だとまた違うかもしれない。

 外観デザインは以前からシンプルでいい車両だと思っていたが、間近で見るとさらにそう思う。特に側面、このアルミの質感を生かした車体とシンプルな窓、そして戸袋にオレンジのブロックを配したカラーリングはどうよ。はっきりいってこれは現代の車両技術が生んだオブジェといっても言い過ぎではないと思った。MoMAに展示しておいてもいいくらいだ。型番は忘れたが、auのデザインプロジェクトの携帯電話(のどれか)に通じるものを感じる。できれば正面もライトをフロントガラス内上部に格納するとかして、さらにすっきりさせれば個人的には最高だ。ただ、このアルミの美しさを維持するためにも、車体清掃はきちんとやってほしい。
 しかしこの車両を見ると、すれ違う東急5000がまるでセンスのない車両に思えてしまう。この車両と同じ日立の「A-train」を採用する西武の新車にも期待したい。
 デザイン、特に側面の美しさという点で言えば、継ぎ目のない「A-train」は東急車輛+JR東のE231系列や日本車両のブロック構体を圧倒していると思う。「A-train」シリーズを関東私鉄で採用しているのは東武、西武、つくばエクスプレス東京メトロだけだ。この中でメトロ=営団がアルミ車に拘るのは分かるが、他3社、特に東武、西武はなぜこの工法を採用したんだろう?この2社は同一系列を大量に増備したり、機器流用車が多かったりと、車両面ではどちらかといえば保守的な印象があったので、新車となればJRで実績があり、低コストなE231同型車を真っ先に投入するかと思えたのだが…。特に東武はこれ以前は特急車以外アルミ車導入の実績がない。もしもE231タイプと製造、メンテが同コストだったり、あるいは安かったりするなら、他社がこれを採用しない理由はなんなのだろうか。2社には東急車輛や日車からも売り込みはあっただろうと思うんだが、どういった経緯で「A-train」の採用に至ったのか聞いてみたい気がする。

*1:8000のシートは適度な柔らかさで、ロングシートの中ではかなり優れていると思う