飯山線の朝

 下り1番列車、戸狩野沢温泉0612着。
 一応夜は明けたが、辺りは乳白色の世界。

 飯山線、実は今まで長野県内のJR線で唯一乗ったことがなかった。県内でも小海線と並んで魅力のある路線だと思うし、東京にいた頃は乗ってみたい路線の一つにいつも入っていたのだが、実際近所に住んでみるとなかなか乗らないものだったりする。
 飯山線の長野発一番列車は5:16発の十日町行き123D。実は長野駅発の朝一番の列車でもある。車両はキハ111ー210+112ー210の2連。初冬の朝、真っ暗な中を5人の客を乗せ走り出す。信越線を2駅分走って豊野、ここから飯山線へ。10人くらいの客を乗せた上り一番列車120Dと交換する。この上りは戸狩野沢温泉4:46発で、長野県内には午前4時台の定期列車はほかにないので県内で一番朝早い列車ということになる。飯山線は何気に早起きな路線だ。
 豊野発5:31。ポイントを渡って飯山線に入ると、やっぱりローカル線だからか今までよりジョイント音が響く。レールが短いんだろう。今まで街灯や自販機の明かりが見えた車窓も、駅の照明以外は全くの暗闇だ。
 エンジンを吹かしながら走るがスピードはゆっくり。実はけっこうな勾配なのか?と思ったが、車窓に見えた勾配標は「L」(水平)だった。替佐を過ぎたあたりから線路脇に雪が目立つようになり、蓮を過ぎるとほぼ真っ白に。まあ長野市内でもすでに雪は降っているんだから当然といえば当然だ。
 飯山6:01発、右側の窓から見える空が少し青みがかってくる。俺は「朝焼けマニア」なので、こういう時間帯が大好きだ。もやがかかっているようで、辺りは雪の積もった地面と空の境がわからない乳白色の世界。長野市内から1時間でこんな幻想的な景色になるとは思わなかった。
 戸狩野沢温泉6:12着。ここからはワンマン運転になる。このあたりから、堀割や山の斜面沿いにスノーシェッドのある区間が目立つようになる。そういえばこの辺は2年前の冬には豪雪で自衛隊が出動したところだ。飯山線というと「豪雪地帯」のイメージが強くあるので、同じく豪雪地帯の只見線のように人跡稀な山中を通るのかと思っていたが、基本的には川沿いの集落を縫って走る路線だ。道路も併走している。
 上境を過ぎると右側には千曲川。もやがかかっていることもあってちょっと水墨画っぽい風景に見える。森宮野原7:02、このあたりでようやく太陽が顔を出す。日曜日だけあって、人影のほとんどない静かな山里を照らす朝日。なかなかいい気分だ。
 次の駅は足滝、ここはもう新潟県。ということは、これで長野県内のJRは完乗だ。新潟県内に入ると、各駅でぽつぽつと客が乗ってくる。越後鹿渡を過ぎて、いままで平行してきた信濃川を渡る。鉄橋の脇に巨大な変電施設みたいなのがあったが、あれは水力発電所か?
 7:41十日町着。この列車は時刻表上では十日町止まりだが、ここで約40分停まった後、183Dと列車番号を変えてそのまま終点の越後川口に向かう。実質的には直通だ。十日町って駅の近くにコンビニなかったよなあ、と思って歩いたがやっぱりなかった。2年前に来たときにはあった、2004年の中越沖地震で被災した映画館かゲーセンか何かの建物はなくなっていた。あるいは気づかなかっただけかも知れないが。
 十日町8:19発。今までの山がちな風景とは変わり、平地を走る。ちなみにこの列車を逃すと次の越後川口行きは12:24分だ。
 越後川口8:46着。今までに通ったことはあるはずだが記憶にはない。はっきりいって何もない駅だ。が、上越線の接続は上り、下りともにとても良かった。