モロッコにTGV建設へ

 もう既にけっこう報道されているが、モロッコTGV建設で同国とフランスが22日に合意(Alstomのプレスリリース)。アフリカ大陸初・そしてイスラム圏初の高速鉄道はモロッコに登場することになりました。
 総工費は20億ユーロで、区間ジブラルタル海峡に臨む街・タンジールとカサブランカ間。まずはタンジールから途中のKenitraまでの約200kmに高速新線を建設し、2013年には最高速度320km/hでの運転を開始する計画とのこと。開通後は現在5時間かかる同区間が、2時間10分に短縮される。車両はTGV Duplexを18編成導入するそうだ。
 ジブラルタル海峡トンネルを作ることになった時点で、モロッコ側にも恐らくヨーロッパ規格の高速鉄道を作るだろうな、とは思っていたが、ついに決まりましたね。
 モロッコの鉄道は今でもなかなかレベルが高くて、ヨーロッパの鉄道とそれほど変わらない。俺が行ったのはけっこう前だが、車両も機関車はSNCFのCC72000やBB22200なんかと同型車が幅を効かせていたし、客車は幹線の1、2等(旅行者に切符を売ってくれる車両)はUIC-Zだった。カサブランカには空港行きの快速電車もあって、SNCBの電車と同型の車両が走っていた。最近ではTrenitaliaのTAF(新型2階建て電車。Ale426)と同型の車両なんかも導入されているみたいだ。国の経済レベルは別として、鉄道に関してはエジプトよりもモロッコのほうが優れていると思った*1
 一つ気になるのは、Alstomのプレスリリースだと「高速鉄道のデザイン、建設、オペレーション、メンテナンスについてモロッコと合意した」となってるようだが、ということは高速鉄道はモロッコ国鉄ではなく、別の会社が運行するという形態になるんだろうか。そうなると完全に「外資」が運行することになるわけで、国内から反発が出ないかな?
 何はともあれ、これでスペイン側の高速鉄道がセビーリャから延伸されてジブラルタル海峡トンネルとつながれば、マドリッドカサブランカ間3時間ちょっと、というのも夢じゃないわけですね。たぶんそうなるんだろうが、すごい話だ。ちなみに俺はモロッコへはスペインから船で行きましたが、コルドバを3連のローカル列車で昼出てアルヘシラス(スペイン側の海峡の街)に着いたときにはすでに夕方だった。
 今回のこの契約はサルコジ大統領がモロッコに行って取ってきたわけですが(まあ当然ながら話はもともと決まってたんだろうが)、やっぱりこういうところがヨーロッパは凄い。高速鉄道技術は世界に誇れるフランスの商品だということを、政府もAlstomもSNCFもRFFも分かっていて、国もバックアップしてシステム全部をまとめて売り込む。誰もが認める高速鉄道のパイオニアで、長い実績を誇る日本の新幹線が車両の輸出にとどまってるのはこういう部分が不足しているからだと思う。台湾高鉄だって線路の路盤関係はヨーロッパ規格で造っているわけで、決して新幹線システムの輸出ではない。もっとも、それでも車両が売れるというのは技術の高さが評価されているという見方もできるが。技術者は一流でも、経営陣や役人や政治家が問題なんだな。コンサルティング能力に欠ける、ってことなんですかね。

*1:エジプトの鉄道も別に悪くはないけど、近代的という点ではモロッコのほうが上だと思う