恭喜發財 香港鉄紀行2009 Vol.2 軽鉄&MTR&オマケ編
もう春節から1ヵ月経ってしまいましたが、香港鉄紀行の続き。今回はMTR・軽鉄&オマケ編です。
MTR(香港鉄路)は、香港の鉄道のほとんど全てを運行する鉄道会社。地下鉄6路線に郊外鉄道3路線、空港鉄道、ライトレール(軽鉄)、さらには中国直通列車まで運行している、なかなかスケールの大きい鉄道です。公式サイトはこちら。
もともとは地下鉄会社でしたが、2007年12月に郊外鉄道3路線と中国直通列車、ライトレールを運行していた九広鉄路(KCR)と合併し*1、現在の姿となりました。不動産開発や中国他都市の地下鉄建設コンサルティングなんかも活発に行っているようで、最近ではなんとスウェーデン・ストックホルム地下鉄の運営権を獲得したようです。(参考=Railway Gazette International)
以前訪問した際の動画もどうぞ。
- 軽鉄
香港の郊外、ニュータウンが広がる新界地区を走るライトレール。現在はMTRの運営で、高加減速を誇る片側運転台のステンレス製中型電車が1〜2両で走ります。運行はバスのように番号の付いた系統に分かれていて、12の系統があります。きめ細かな運行で利便性は高そうですが、一見さんにはちょっと複雑です。
線路は一部区間を除き専用軌道。今やライトレール=「新型路面電車」という認識が広まっていますが、そもそも「ライトレール」という言葉ができたときの定義には「基本的に専用軌道を走ること」というのが含まれていたので、そういう意味ではこれこそ正しいライトレールの姿なのだ、ともいえます。車両は低床車ではないものの、停留所のホームへはスロープがあり、ホームと車両床面の高さは同じなのでバリアフリー的には問題ありません。
運賃収受システムはチケットキャンセラー方式。当然ながら駅に改札もなければ車両に運賃箱もないので、施設は簡素、乗降も至ってスムーズでした。券売機やオクトパス*2のリーダーはホームに野ざらしで置いてあります。治安がいいということでしょうね。
なんというか、車両も停留所もシンプルかつ合理的で、大げさなインフラの割に輸送力やバリアフリーの面でやや問題のある新交通システムの類と比べてとても実用性に徹した乗り物だな、と思いました。LRT導入を考えている自治体の方々は視察されたらどうでしょう?
615系統・屯門碼頭行き。ヨーロッパの路面電車のように片側運転台で、ドアも片側(左側面)にしかありません。要は島式ホームの駅はないわけですね。終点ではループ線で折り返します。
こちらは2両編成の761P系統・天逸行き。軽鉄の列車編成は最大2連で、後ろの車両は運転台のない増結用です。ちなみに、後ろの歩道橋にある赤い横断幕には「住環境にも風水的にも悪いからマンション建設反対」みたいなことが書いてありました。
MTR西鉄線との接続駅、兆康。模型のような急カーブの配線を、決して小型とはいえない3ドアの電車が走る様子はなかなか面白くて、ついつい無駄に長居してしまいます。
SuicaやPASMOなんかが普及する前は、正月に記念乗車券や記念カードを発売する鉄道会社がけっこうあったと思います。オクトパスの発行枚数が人口を上回っているという香港でそんなのはないだろう…と思いきや、MTRにはちゃんと春節の記念乗車券がありました。
「己丑牛年紀念票」。英語だとYear of the Ox Commemorative Ticket 2009。そのまんまですね。紙製ケース付きの磁気カード2枚組で、オマケとして写真&SDカード入れになる牛君キーホルダー(写真右側)が付いてきます。
券面の拡大。使うつもりは最初からなかったんですが、買おうとしたら駅員に「これ明日(1/26)しか使えないけどいいの?」。せめて3日間くらいは使えるのかと思ってたのですが、全線乗り放題とはいえなかなか厳しい記念切符です。注意書きを見ると払い戻しも26日のみ可。さすが香港、なかなかシビア。
成田空港の第2ターミナルにはサテライト間をつなぐシャトルがありますが、あれは見た目こそ電車っぽいとはいえ、システムは空気浮上式(ゲーセンにあるエアホッケーのような感じ)でメーカーもオーチスエレベータと、あくまでごく短距離の移動手段、鉄道というよりは水平移動エレベーター的な乗り物です。
しかし香港国際空港のターミナル内新交通システム(Automated People Mover)は違うのだ。これは無人運転、片側2扉車の4両編成で、日暮里・舎人ライナーの代わりに走っていてもおかしくないような本格的ゴムタイヤ式AGTです。最高速度はなんと60km/h以上で、なかなかの走りっぷりを見せます。
ホームの様子。普通の都市内交通機関のようです。車体はシルバーに窓周りが青の塗装。恐らくステンレス製車体でしょう。下半分が青塗装の車両もありました。スクリーンドアがあるので撮影はちょっと困難。
車内。乗車時間は2分程度なので座席はなし。ドアは両開きで、荷物の大きな人でもスムーズに乗り降りできるのはさすが空港内交通システム。ラインフローファンの吹き出し口が日本の電車っぽいな、と思ったら、この新交通システムは三菱重工が納入したんだそうです。
これぞ本格的鉄道の証?実はこの新交通システム、「Maintained by MTR」でした。隣にあるステッカーには「6-Mc4」と書いてありますが、形式でしょうか。
- オマケ2 香港のバス
日本では乗り物趣味といえばまず「鉄」ですが、香港は鉄道網の拡大が近年までそれほど進まずバスが陸上交通の主流だったためか、バスヲタクが圧倒的に多いようです。正直言って、MTRより2階建てバス(とフェリー)のほうが乗ってて楽しいのは事実。というわけで、にわか巴士迷(バスヲタク)になってみました。
ホンハム・フェリー乗り場のバスターミナルにて。2階建てバスがずらっと並んでいるとけっこう壮観です。写っているのは全てKMB(九龍バス)の車で、金色塗装のほうが新しいタイプ。最近の新車は金色のようです。
これは巴士迷でなくても春節のおみやげとして欲しくなる丑年記念バス模型。実際にこの塗装のバスを走らせているKMB(九龍バス)のオリジナル製品で、チョロQのようにプルバックで走ります。尖沙咀のKMBサービスカウンターで購入。干支柄バスとその模型は春節の風物詩なのか、ショーケースには歴代の干支バス模型がずらり並んでいました。
新年の朝のバス。行先と新年を祝うメッセージを交互に表示していました。メッセージは「心想事成」のほかにもいくつもあって、なかなか凝ってます(ウチの近所を走ってる川中島バスも正月は「謹賀新年」って出してましたが)。写真を撮っていたら運転手がニヤニヤしていました。多いんでしょうね、同じような奴が。
春節の夜は一晩中やっているヴィクトリア・パークの花市(正月飾り用の花を売る特設の市場。実質的には半分フリーマーケット状態)にもバスグッズの店が。恐るべし巴士迷。
ちなみにここで「香港巴士資料集」という解説本を買ってみたのですが…どうみても同じ形のバスなのになんで形式が違うんだ?みたいな…香港巴士迷への道は遠い。
- オマケ3 六本木はJRの駅でした
ヴィクトリア・パークの花市で巴士迷の店の向かいにあった謎の露店。なぜJRの駅名標?しかも「六本木」は違うしな(笑)。割と売れていました。
香港は物価が高いのがやや難点ですが(特に宿泊費)、乗り物のバラエティでは世界でも有数の街じゃないでしょうか。ホームまでエアコン完備の近代的なMTRから縦横無尽に駆け巡る2階建てバス、昔ながらの姿で走り続ける路面電車やフェリー。街並みもそうですが、新旧のいろんなものが入り乱れつつ共存する姿になんとなく「本物の都会」を感じるのです。