インドで人が列車を押した!

 前にインドの鉄道時刻表を買った(実はほかにも服とか買ってますが)インド関係グッズを扱うティラキタというお店がメールマガジンを毎週送ってくれるのですが、これはそこで取り上げられていたニュース。「人が列車を押した」といっても「人車軌道」ではありません。れっきとした本線上での話です。
 9月16日、インド東部・ビハール州を走行中の列車内で乗客が非常停止用のヒモを引っ張り、列車が緊急停車。停まった場所がちょうど僅か12フィートの無電区間(参考サイト本文中では「neutral zone」)だったために列車は再起動できず、仕方なく乗客が全員降り、30分かけて列車を押して動かした。インド国鉄のスポークスマンいわく「こんな話は聞いたことがない」とコメント。(参考=上記メルマガにリンクされていた英メトロのニュース
 12フィートは約4m。たったこれだけの無電区間で停まってしまうというのは運が悪いというかなんというか…。「neutral zone」というのは要するに架線に給電されていない、つまりは「デッドセクション」のことですね。どの路線を走るどの列車でこのアクシデントがあったのか詳しくは書かれていないのでわかりませんが、インドの電化方式はムンバイ近郊区間で直流1.5kVが使われているほかは交流25kVなので、ビハール州も交流電化と思われます。というわけで、このアクシデントがあったのは交流区間と直流区間の境目にあるデッドセクションではなく、交流電化の路線で、変電所の違いによって位相の異なる区間に設けられた*1「異位相区分セクション」でしょう。
 わずか4mで動かなくなったということは恐らくパンタグラフが列車に1つだけだったということでしょうから、列車は電車ではなくて機関車牽引の列車でしょうね。しかし、救援機関車を呼ぶとかじゃなくて「押して動かした」ってのがいかにもインドっぽいです。

 日本だと、一番列車本数の多いデッドセクションは交流−直流の切り替わる常磐線の取手−藤代間でしょうか。国内ではデッドセクションで非常停止して立ち往生、というトラブルはあまりないようですが、最近だと2007年1月11日に、水戸線・小山−小田林間の無電区間(ここは交直セクション)で発生したそうです。さすがに乗客が押したりはしてないと思いますが(笑)。
 そういえば無電区間とは違いますが、07年6月22日には東北本線・大宮−さいたま新都心間のエアセクションで列車が停止して架線が溶断した、というのもありましたね。

*1:変電所が違うと、周波数が同じでも電流の+と-のサイクルがシンクロしないので、交流電化の区間では変電所ごとに送電区間を分けて、その間を短い無電区間にする。交流電化でも、新幹線は列車の走行にあわせて自動で変電所を切り替えるシステムなので無電区間はない