川崎重工、世界市場向け高速鉄道車両を自主開発へ

 ちょっと遅いニュースですが。
 川崎重工は11日、世界市場への売り込みに向けて、350km/h運転可能な高速列車「efSET(Environmentally Friendry Super Express Train)」を自主開発することを決定。2009年度末までに開発を完了する予定。(参考=川崎重工のニュースリリース
 ついに日本の高速鉄道技術が本格的に世界進出するときが来たわけですね。この車両は新幹線をベースに開発されたこれまでの輸出車両(台湾高鉄700Tや中国のCRH2)とは違い、納入先が決まっているわけではなく、同社が完全に独自で開発し、それを売り込んでいくという、海外の鉄道車両メーカーのような開発形態を取るとのことです。

 これは世界進出に向けてかなり期待できるのではないか、と思います。特に、個人的には「新幹線の輸出」ではないところに大いに期待が持てます。
 アルストムシーメンスボンバルディアといった海外大手メーカーは、自社で開発した車両を各国に売り込む、というのが最近では一般的になってきています。広電5000形「グリーンムーバー」でおなじみのシーメンスの「コンビーノ」のように(アレは前面デザインはカスタマイズされてますが)LRVなんかはまるでBTOのパソコンのようにモジュール化されて、同タイプの車両が各国で走っていますし、一般の鉄道向けの機関車、電車なんかも同様の傾向が強くなっています。高速鉄道車両も同様で、アルストムの新型高速車両「AGV」やドイツの「ICE3」タイプのシーメンス製高速車両「Veralo」はその一例でしょう。アメリカのGEやEMD製の電気式ディーゼル機関車なんかはそれこそ世界中で活躍しているはずです。
 そういう「車両/電機メーカー主導」の、レディメイド(かセミオーダーメイド)の車両が主流の世界に打って出るときに、あくまで国内で運転する目的で開発された新幹線を一部改良して…というのでは、開発の早さや柔軟性で外国メーカーに追いつけるとは思えません。日本の鉄道車両が世界トップクラスの完成度を誇るのは間違いないでしょうから、技術のあるメーカーが独自でどんどん売り込んでいくほうが、国内の鉄道会社向けに造ったものに縛られるよりも絶対に有利でしょう。それに、大手のメーカーや商社のほうが、鉄道会社より海外進出には長けているはずです(商売が違うんだから当たり前ですが)。*1
 ニュースリリースにも書かれていますが、今後はアジアの新興国などを中心に、高速鉄道の建設が進んでいくでしょう。最近、中国は海外大手メーカーと提携して高速車両を導入していますが、その際に欧米メーカーが中国メーカーと合弁で工場を造ったり、技術供与したりしているのは、恐らく「低コストでアジア各国へ輸出できる拠点作り」という意図もあるだろうと思います。韓国メーカーでも高速車両を開発しています。アジア各国に高速鉄道網が伸びるとき、世界の強豪を相手に高速鉄道のパイオニア、日本の技術が勝利することはできるか?その第一歩になるのが「efSET」でしょう。
 日本はクルマでは世界に冠たる輸出国ですし、鉄道に関しても輸送量や信頼性ではトップレベルなわけですから、日本の鉄道車両や技術がどんどん世界に進出してくれたら、日本人の「鉄」としてはとても嬉しいことだと思います。

*1:ヨーロッパ最大の機関車レンタル会社、Dispolokが実は三井グループでCEOが日本人だというのを知ったときは「日本の商社ってすげえなあ」と思いました