中国、北京―天津間の高速鉄道が開業

 北京オリンピック開幕を一週間後に控えた1日、鉄車輪式の鉄道としては世界最高速の350km/h運転を行う北京―天津間の高速鉄道が営業運転を開始。(参考=Railway Gazette International新華社(英語版)中国国際放送(日本語版)
 Railway Gazetteなどの事前の情報では、路線の設計最高速度は350km/h、開業時の営業最高速度は300km/hで、将来的には350km/hでの運転を計画しているとのことでしたが、各種報道によると開業時から最高速度350km/hでの運転になったんですね。スペインが先陣を切るかと思われていた350km/h運転は、あっさり中国が一番乗りを果たしてしまいました。やっぱり国際的イベントの力は大きい。

 各種情報を総合すると、路線は北京南駅と天津駅を結び、延長は117km。一日の運転本数は47往復で、所要時間は従来の70分から約30分へと大幅な短縮を実現しています。
 投入される列車はドイツのICE3(シーメンス製・メーカー形式Veralo)がベースのCRH3が4本と、東北新幹線E2系1000番代がベースのCRH2-300が6本で、いずれも8両編成、定員は600人。新華社の記事では350km/h運転が可能なのはCRH3のみで、CRH2-300は最高速度300km/hとありましたが、実際はCRH2-300も350km/hで走っているようです(車内のLED表示板に347km/hと出ている動画*1。E2-1000とほぼ同様のインテリアからCRH2と判別できます)。特筆すべき点としては、両形式とも屋上にソーラーパネルが設置されているんだそうです。上記リンクのRailway Gazetteのページに両形式の写真が出ていますが、CRH2-300はほとんどE2-1000そのままだった従来のCRH2(参考=CRH2乗車記)と外見が若干異なり、先頭部の連結器カバーよりやや上にヘッドライトが左右2つ追加され、従来は側面のみだった青帯が先頭部まで巻かれています。正直言って、増設されたヘッドライトの鋭角な形がちょっと目つき悪い奴だな・・・という感じ。しかし中国はどうしても前面に「和諧号」ってレタリングしたいんですね。これがなければけっこうスマートなカラーリングだと思うのに…。
 線路は全線の86%が高架。沿線が堆積砂土で地上に線路を直接敷設するのには向かないため*2とのことで、高架区間ではドイツのMax Bögl社の技術供与によるスラブ軌道を採用し、レールは60kg/m。ドイツの高速新線のスラブ軌道といえば台湾高速鉄道の一部区間でも採用されたRhedaが有名ですが、これとは別物で、ドイツ本国ではニュルンベルグインゴルシュタット間高速新線の軌道に採用されているとのこと。ちなみに同社は上海リニアの軌道も施工したようです。
 信号システムはシーメンス中国企業の技術によるヨーロッパのETCS Level1相当のシステムを採用し、最小運転間隔は3分。ETCS Level1というと地上信号式ATCのようなシステムですが、これは本当なんでしょうか?350km/hで地上信号は認識できるのかな?とちょっと思ってしまいます。あるいは車上信号式に改良されているんでしょうか(それだとETCS/ERTMSではLevel2になるが)。まあシーメンスも絡んでいることだし、技術的には問題ないんでしょう。しかしこの路線、CRH2-300が走るということは、ヨーロッパの信号システム準拠の路線を日本の技術による車両が走るわけで、これをきっかけにヨーロッパで新幹線車両採用の機運が高まったりしないかな…と思ったりもします(まあないだろうが)。

 なにはともあれ、これでアジアでは日本、韓国、台湾、中国に300km/h運転の高速鉄道が走るようになったわけで、東アジアに本格的な高速鉄道時代がやってきたといえるでしょう。新幹線―KTX―CRH―台湾高鉄なんて乗り継いでみたら面白いかもしれません。ちなみに、中国の鉄ヲタは開業日の切符を手に入れるために前日から並んでいたとか(参考=BBC)。そりゃやっぱり乗ってみたいですよね。私はこの夏は無理そうですが、もしオリンピックを現地に見に行く人がいたらぜひ乗ってきてください。

*1:skyscrapercityという掲示板(左側ブックマーク参照)の中国鉄道関連スレッドより

*2:参照した資料に"alluvial soil"とあって、辞書を引くと「堆積砂土」とあった。正直地質のことはよく分かりません