彰化の扇形機関庫に行く。

 台湾中部の彰化には、日本統治時代に建設された扇形機関庫があって見学できる、というので行ってみました。台湾の鉄道関係の本やサイトを見ると結構載ってるし、一般のガイドブックでも紹介されているので、割と有名ですね。現地の人にもポピュラーな観光地になってるようです。


 彰化は西部幹線の海線と山線が合流する駅。駅舎の前に立ち並ぶ木が南国風だが、なんとなく日本の地方都市の駅のような感じ。台鉄はやっぱり「国鉄」の面影がある、と思う。
 駅にコインロッカーか荷物預かりがあるかと思って探したが見当たらなかった。そんなわけで荷物を抱えて機関庫へ。機関庫は駅の台北寄りにある。駅前の大通り(三民路)を右へ進み、斜めの道(和平路)との交差点で左へ。線路際の道に出るが、壁があるので線路は見えない。壁際には路上駐車の車の列、反対側にはよくわからないビル?が立ち並び、ちょっと裏通りの雰囲気。

 機関庫は線路の反対側にある。しばらく歩いても入り口らしきものはなく、やがて線路をくぐる車道に突き当たった。どこから行くんだ?と思って振り返ると、歩行者用の地下道入り口があった。入り口が向かう方向と反対を向いているのでちょっとわかりにくい。

 地下道をくぐるとすぐに機関庫の入り口。ここまで徒歩約5分。
 門を入ると左に守衛室のようなところがある。「入りたいんだけど?」というと、訪問者は名前を書け、とのこと。それ以外には入場料も要らないし特にパスポートとかも要求されなかった。守衛のおっさんは特にこちらに来るでもなく、座ったまま「まあ適当にやっといて」みたいな感じで、なかなか適当だ。ちなみにこの日は、俺のほかにも日本人が一人来ていたようです。特に案内人が付いたりはしないので、順路に沿って勝手に入る。



 これが機関庫。完成は民国11年というから1922年。屋根上に立った煙突が、蒸気機関車全盛期を思い起こさせる。コンクリートの近代的建築としてはけっこう初期の建物じゃないかと思いますが、柱が細めで窓も多く、明るい感じのする建物です。あまり後ろに引けなかったので(広角レンズがありゃいいんでしょうけど)全景が撮れなかったが、線路は12本ある。実際に使われているところなので、さすがに庫内には入れなかったが、停まっている機関車にはかなり近づけるし、特に柵やロープで仕切ってあったりもしない。好きなように見て歩ける。

 R20形。1960年から導入されたGM製の客貨両用電気式ディーゼル機。大半が彰化機務段所属。間近で見るとけっこう迫力あります。

 保存蒸機も停まっている。これは動態保存されているタンク機のCK101。

 D51と同型のDT668(DT650形)も停まっています。1941年川崎車両製で、日本統治期の形式はD5118のはず。こちらは今のところ静態保存機。
 そうこうしているうちに、係員がやってきてターンテーブルをぐいっと回しはじめた。機関庫の6番線で整備されていたディーゼル機、R27が出庫するようだ。これは動画でご紹介。

 6番線にターンテーブルをあわせ、R27が動き出す。本物のターンテーブルが回転→機関車を載せて→本線の位置にターンテーブルが回り→出庫、という一連の流れを目の前で見ることができた。もちろん機関庫だから当たり前のように行われている作業だろうが、こんなに近くで機関車の出庫風景を見れることは日本ではまずないだろうから、なかなか貴重な体験でした。

 機関庫の横には展望台もあって、上から眺めることもできる。展望台にいる間にも、機関庫の1番線で整備された電機を、ディーゼル機と連結した別の電機で引っ張り出す(機関庫には架線がつながっていない)様子を見ることができた。

 展望台の上から見えた機務段内の建物。なんとなく日本の鉄道施設の雰囲気が。これも日本統治期の建築かも?

 結局1時間くらい滞在しましたが、この機関庫、何よりすばらしいのは見学がかなり自由なこと。要は自己責任ということなんだろうが、特に案内人がいるわけでもないし、機関車が出庫するときも「見学者の方は危険ですから離れてください」的なことは何も言わない。おかげで本当に間近でいろんな作業を見ることができる。日本の鉄イベントや見学会には付き物の、あちこち勝手に入り込んだり文句を言ったりする変なヲタは台湾にはいないんだろうか。うらやましい限りだ。
 あと驚いたのは、たまたまだろうが俺以外の見学者がみんなカップルだったこと。「扇形機関庫」なんて結構「濃い」スポットだと思うんだが。記念写真を頼まれたので撮ってあげましたが、台湾人的には扇形機関庫デートはアリなんだろうか?