世界初の350km/h運転は中国になるのか?

 始まる前からいろいろと問題の多い北京オリンピックに合わせて開業する中国の高速新線、北京―天津間に投入されるCRH3が登場。11日にロールアウトしたそうです。(参考=Railway Gazette International
 メーカーである中国北車集団唐山軌道客車有限責任公司(長い)曰く「国産初の350km/h対応車両」とのことですが、見ての通りシーメンスのVelaro(ICE3とかスペインのAVE S103とか)の中国版。要はE2-1000ベースのCRH2と同じように提携して造った車両で、純国産ではない。CRH2と同様、最初の3編成は本国ドイツから輸入されているはずなので、現地生産の第1号ができあがったぞ、ということでしょう。
 ICE3との大きな違いは、車体幅が300mm広く、2等では座席が3+2の配列になっていること。編成は8連で、4号車が食堂車、5号車が1等車。両先頭車は2等だが、1等が8席あることになっている。編成全体での定員は600人。
 北京―天津間の高速新線にはCRH2の300km/h対応車も投入されることになっている。開発元はもちろん、中国内でのメーカーも両者で違うので、どっちが優れているか比べるという目的もきっとあるんでしょうね。
 しかしこれで中国には川重のCRH2、ボンバルディアのCRH1、シーメンスのCRH3、アルストムのCRH5と世界の高速鉄道主要メーカーの車両が揃ったわけだ。日本では「中国に技術を流出させるな」という声も多かったが、ヨーロッパではどうだったんだろうか。でも、欧州のメーカーは今後アジアで高速鉄道が開業するとなれば、中国の提携メーカーで安く造って供給できますよ、と売り込むことも考えて、あえてやってるんだろうなと思う。その時果たして新幹線は勝てるだろうか?


 で、北京―天津間の高速新線は8月に開通するという話だが、現時点では300km/h運転が予定されているこの路線、350km/h対応で造ってあるのだそうだ(参考=Railway Gazette International)。シーメンスのVelaroというと、350km/hでの営業運転というふれこみだったにも関わらず現状では300km/h運転のスペインのAVE新線、マドリッドバルセロナ間を思い起こすのだが、ひょっとして中国が先にやってしまうんだろうか?なんかあの国は無理してでもやってしまいそうな気がしなくもない。
 ちなみにこの新線、参考記事によると信号システムはETCSレベル2*1と同等のシステムも導入できるようになってるそうだ。ERTMS/ETCSのキモといえるGSM-R*2システムの供給メーカーにHuawei(中国の通信機器メーカー、華為技術イーモバイルのUSBモデムがこのメーカー製)が入っているのでまあ不思議ではないんだが、そういうグローバルな部分にちゃっかり踏み込んでいるのを見ると末恐ろしいという気がする。

*1:ヨーロッパで開発された次世代標準信号システムの一種。超大ざっぱに言うと軌道回路の代わりに携帯電話技術を活用したデジタル通信を使うデジタルATCみたいな感じ?

*2:携帯電話の通信方式の1つ、GSMを鉄道向けにしたデジタル通信システム。GSM for Railway