ブルトレ 09年春までに東京駅から撤退

 11月18日付朝日新聞に掲載の驚くべきニュース。
 なんと来春3月のダイヤ改正以降、各地を走るブルートレインが順次廃止されていくという話だ。一部を引用すると*1

 JR各社の複数の関係者によると、08年3月中旬のダイヤ改定で消えるブルトレは、京都―熊本間を走る「なは」と京都―長崎を結ぶ「あかつき」、東京―大阪の「銀河」。また、大阪―青森の「日本海」と上野―札幌の「北斗星」は、現行の1日2往復から、1往復に減る。

 さらに、

09年春のダイヤ改定では、東京―大分の「富士」と東京―熊本の「はやぶさ」の廃止が、JR各社の担当課長レベルで合意済み。

 衝撃的なニュースだ。実は一昨日、職場の先輩と「夜行列車がどんどん廃止になって残念だ」という話をしていたのだが、そこにいきなりこんな話、超ショッキングだ。
 「なは」「あかつき」「富士」「はやぶさ」あたりはまあ正直なところある程度仕方ないと思えるのだが、俺が一番驚いているのは「銀河」を廃止するという点だ。
 「銀河」は東京発23:00―大阪着7:18、大阪発22:22―東京着6:42と、上り下りともにいわゆるビジネスユースの「有効時間帯」に完全に合致している。いくら東京―大阪が「のぞみ」で2時間半かからないとはいえ、「銀河」の発車時刻には新幹線、飛行機とも既に最終便が終わっているし、翌日の始発に乗っても「銀河」の到着時刻に着くのは無理だ。仕事で「銀河」を愛用していた人は実際に身近にいたし、そんなに利用率が低かったんだろうか?「銀河」は「ビジネスユースに使える乗り物」という点で他の寝台列車とは一線を画している。正直いって廃止はもったいないと思えてならない。
 今、夜間の移動といえば高速バスが圧倒的に主流だ。俺も正直言って夜行列車より夜行バスを使った回数のほうが多い。というか、数え切れないくらい乗っている。料金は安いし、発着時間はほぼ全ての路線が有効時間帯に設定されている。車内もそれなりに快適だ。ターミナルにシャワー室があったりもする。ネットやコンビニで予約したりチケットを買ったりもできるから、利用も簡単だ。
 結局、夜行バスのメリットというのは全て「寝台列車に欠けている点」なんじゃないだろうか。
 まず、寝台列車は料金が高い。B寝台(客車2段式)でも寝台料金だけで6300円。200円ちょっと足せば「東横イン」に泊まれる値段だ。快適性はもちろん「東横イン」のほうが上に決まっている。寝台列車はさらに乗車券と急行(特急)料金がかかる。それならば、時間的に可能なら飛行機や新幹線で行って安いホテルに泊まったほうが快適だし楽、ということになるのは明らかだ。それを「高い」と思うなら夜行バス。今や会員制ツアーバスだったら、がんばれば片道の寝台料金で往復もできるだろう。そう考えると、寝台列車の料金というのは中途半端と言わざるを得ない。
 さらに、駅に着いたところでシャワーを浴びることもできない。夜行バスではターミナルにシャワー室があったり、代わりにバス停近くのサウナの割引がある路線もあった。早朝営業の喫茶店の割引券をくれたのもあった。寝台列車は何もない。駅にJRグループのホテルがあってカフェテリアが早朝から開いていても、サービス券ももらえない。
 そういった点を考えると、廃止でも仕方ない、自業自得じゃん、と思えなくもない。
 ただ、バスは時間が当てにならない(実際俺は12時間遅れになったことがある)。それに、どんなにリクライニングしようが椅子で寝るのはやっぱり疲れる。旅行ならいいが、仕事で使うにはちょっとしんどい乗り物であるのも事実だ。列車ならPCを持ち込んで仕事もできるだろうし、デッキで携帯電話も使える。他の客に迷惑をかけず酒も飲める。列車ならではのメリットは多いはずだ。なにかもっと、寝台列車の上手いやり方はなかったんだろうか?
 一つには、切符の販売形態がもっと考えられてもよかったんじゃないかと思う。たとえばネット販売主体にするとか、旅行会社に卸すとかして、全席を売り切るように時期や空席数に応じて値段を決めていく、とか。ヨーロッパやアジアで急拡大している格安航空会社(LCC)はそうやって「薄利多売」で満席にすることで値段を下げているわけだし、ヨーロッパでは鉄道もどんどんそういう形態での販売を進めている*2。高い料金でガラガラの列車を走らせるよりは利益が出るんじゃないだろうか?スキーリゾートとタイアップしたJR北海道のリゾート列車を見れば、そういう風に駅窓口では販売しないというやり方は不可能ではないように思える(国鉄時代からやっていたんだし)。
 到着・出発地でのサービスに関しては、それこそJRなら系列のステーションホテルを持っていたりするのだから、何らかのタイアップをしたりできなかったんだろうか。
 一部の夜行バスには「プレミアムシート」みたいな高級、快適志向のものが出てきている今、本来ならそんなのより遥かに快適性に優れているはずの寝台列車が、ほぼ放置プレーともいえる無策で廃止されていくのはとても残念だ。


 しかし、東海道本線なんかで深夜にたくさん走っているコンテナ特急に寝台車をぶら下げるサービスってやってくれないものかな。速いし貨物の「ついで」としてなら儲かりそうに思えるんだが。販売は楽天トラベルにでも委託すればいいし。

*1:朝日新聞購読者だから許して>朝日

*2:TGVなんかはもともと定員以上の予約を取る飛行機と似たシステムなので、割とすんなりできるんだろうが。商業的にTGVが成功をおさめた大きな理由の一つは、格安チケットを販売できる予約発券システムにあるといわれているそうだ。