TRANSIT MAPS OF THE WORLD

 全世界の地下鉄(またはそれに準ずる都市鉄道)の路線図を集めた本。
Transit Maps of the World: The World's First Collection of Every Urban Train Map on Earth

 はっきりいって、俺はこういう本を待っていた。この本を知ったきっかけはamazonから送ってきたメールで、いつもならそういうメールは読まずに速攻で消去なのだが、メールのサブジェクトに「Transit Maps〜」とあったので一応開いてみたら「the first and only comprehensive collection of historic and current maps of every rapid-transit system on earth. 」と書いてあったので、全世界の都市交通の路線図のコレクション?これは買うしかねーだろ!と思ってそのまま速攻で注文してしまった。

 サイズは横長の276mm×241mm、141ページ。表紙を開くと、扉には地下鉄の走る世界中の都市を駅に見立てたロンドン地下鉄風デザインの地図(上の写真。よく見ると世界地図になってます)が描かれていて、この時点で「やられたっ!」という感じ。本文の構成はまず路線図の歴史(都市鉄道の発達→路線図の登場→デザイン化された路線図への進化)の解説があり、続いて全世界の地下鉄路線の紹介。路線網の規模によって6章に分けているのだが、これも「Chapter」じゃなくて「ZONE」と書いてあったり、とにかく著者が路線図大好きっていうのが伝わってくるセンスのいいつくりだ。
 鉄道、特に大都市の地下鉄の路線図というのは、ロンドンを代表として特に鉄道に関係ないデザインのモチーフにも使われたりして、ある種「都市のアイコン」的存在になっていると思うんだが、ざっと見ていくとやっぱり国民性というのか、全部が全部ではないにしろ国や地域で傾向があるように感じられる。世界の地下鉄路線図の「お手本」とも言えるロンドンの路線図はやっぱり洗練されたデザインだ。フォントや基本的なデザインが既に70年以上前に出来上がっていたというのはすごい。パリは一見似ているようだが、斜めの線が主体で色もパステルカラーっぽくて、ちょっとおしゃれな感じ。ドイツの各都市は乗り換え可能な各線が細かく書かれていて、さすがドイツという感じがする。アメリカは線が太めではっきり見やすい。
 で、俺が一番かっこいいと思ったのは、丸の内線や名古屋市営地下鉄の中古が走っているので有名なブエノスアイレス・Metroviasの路線図。

 路線が少なくてすっきりしたデザインにしやすいというのもあるだろうが、黒地に鮮やかなラインの色彩センスといい、とても世界で一番古い地下鉄車両が走っているところとは思えない*1洗練されたデザイン。実は俺は以前PCの壁紙にMetroviasのを使っていたのだ。イタリア・ナポリのもグレーをベースに独特のフォントでかなりかっこいい。まあ俺がどっちかというとラテン系デザインが好きなせいもあるだろうが。この本によれば、暗色がベースの路線図というのはブエノスアイレスナポリ以外ではモントリオールオスロトロント、神戸と計画中のチェリャビンスクだけだそうだ。
 で、我らが東京の路線図なんだが…正直言って駅ナンバーが導入されてからの路線図はデザイン的にはかなり厳しいものが…。営団時代はサインシステムや「メトロネットワーク」の路線図もクールでかっこよかったのに、東京メトロになってから無理やり変えた(としか思えない)各種デザインはいまいちいただけない。この本では「(駅ナンバーの)アイデアは悪くないが、コンピューターの基盤みたい」と評されている。日本では名古屋がけっこういい感じだと思った。
 というわけで、この本は本当に買って正解だった。洋書でこの内容で3000円以下というのも素晴らしい。暇なときにぱらぱらっと見ているだけで楽しめるし、ちゃんと読んでも面白い(と思う、ちゃんと全部読んでないけど)。なんていうか「するめ」的な本だ。鉄ヲタだけじゃなくて、デザインに関心のある人にもおすすめです。

*1:*確か1913年開通当時の車両がまだ走っているはず