N700に乗る(つづき)

 これを書いているのは帰りの「のぞみ」700系の中。

 N700系に乗っての第一印象は「安っぽい」。写真で見るとそれほど感じないが、普通車の客室内に足を踏み入れた瞬間に「うわー安っぽ」と思った。デッキのあたりはともかく、客室内はいままでの新幹線と比べてもかなりプラスティッキーな感じだ。車内の雰囲気という点では俺が普段乗っている長野新幹線のE2より確実に落ちる。壁面やシートファブリックも含め「300km/hで走るE231」という感じ。もっと言ってしまうと、車内の表示ステッカー類のデザインとも相まって、新しくできたビルなんかにある車椅子対応トイレを一瞬連想してしまった。E231グリーン車のほうがインテリアのセンスは遥かにいい。

 車内で特に目に付くのは号車番号や座席番号、LED電光掲示板などの表示類が大きくなっていること。視力があまりよろしくない俺には遠くからでも分かりやすい。バリアフリーという観点でも優れていると思う。ただ、これも決してデザインセンスがいいとは思わなかった。

 座席は見た目で「薄い!」と思った。別に背もたれが薄いから悪いというわけではないし、B席(3列席の中間)で両側に人がいても出入りしやすいと感じたので、恐らく薄くした分若干シートピッチが広がっているのだろう。それで座り心地が良ければ言うことないのだが、特にいい座席だとは思えなかった。従来の700系やE2のほうが座り心地はいい感じがする。ただ、元々幅の広いB席以外も1人あたりの幅が広がっているので、隣の人と肩が当たったりすることはなく(俺は肩幅が無意味に広いので、狭い座席だと文字通り肩身の狭い思いをする)、スペースという点ではけっこう快適に過ごせた。

 乗り心地は、セミアクティブサスペンションを全車に導入ということなので割と期待していたのだが、それほど揺れが減っているとは感じられず、効果があるのかどうか分からなかった。カーブでの最高速度が上がったのに今までと大して変わらないということは、効果があるということなのかもしれないが。山陽区間での揺れはけっこう激しく、歩きながらよろけているおっさんもいた。もっともこれは500系でも似たようなものだったかもしれない。車体傾斜装置については、「これは作動中なのか?」とたまに思うこともあったが、なにしろ傾斜角が1度なのでよく分からなかった。走行音は700系と比べてみると多少静かになっている気がする。デッキのドアが開いてもそれほど騒音レベルが変わらないので、デッキ部はかなり静かになっているはず。車体全周ホロの効果だろう。

 全体的に見て、N700系はスペック的にはとても優れた電車です。カーブでも270km/h走行可能、東京―新大阪間を5分短縮、消費電力を0系より32%削減…etc. でも「乗り物」としては、そういう風に数値化できない部分―感覚的な快適性とか落ち着きとか―をもっと大切にしてほしかった。「最新技術という、おもてなし。」というキャッチコピーは良くも悪くもこの車両を的確に表していると思う。技術的な、数値化可能な面以外で「おもてなし」が特に進化したとは感じられなかったからだ。


 …と、ちょっと辛口評価になってしまった。
 しかし新幹線、特に東海道新幹線は日本の誇る鉄道の最高峰だから、やっぱり期待もそれなりに大きいわけです。そんなわけで、もう少しデザイン面(外観のことではなくて*1)でも頑張ってもらいたかったなと、俺は思ったのでした。

*1:外観、特に正面形状は賛否両論あるようだが、実は外観はけっこう気に入っている。模型にしたらかっこいいだろう